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  1. 国立大学法人 北海道教育大学
  2. 大学紹介
  3. 学長室から
  4. 学長メッセージ
  5. 令和4年度
  6. 学長 令和5年年頭挨拶

大学紹介学長 令和5年年頭挨拶

 皆さん、明けましておめでとうございます。新年の仕事始めにあたってご挨拶申し上げます。

 毎年のことですが、教職員の皆さんには昨年も大変お世話になりました。特に、第3期中期目標の達成状況報告書、あるいは機関別認証評価のための資料作成など、大学として重要な案件が重なりました。また、令和5年度概算要求に向けての企画から資料作成まで、そして土地有効活用に向けた様々な調整、補助金獲得、コロナ対策など、各校の教員の皆様、そして本部事務局及び各校の職員の皆様にはご苦労をおかけしました。お一人お一人、それぞれ人知れぬ苦労があったことと思います。年末年始、大して休めなかったとは思いますが、そうした一人一人の苦労の上に、こうして無事新年を迎えることができたのだと理解しているつもりです。改めて感謝申し上げます。月並みですが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 この元日、朝刊でスベトラーナ?アレクシエービッチというノーベル賞作家のインタビュー記事に目が止まりました(注1)。「人間性を失う」ということを「人間から獣が這い出している」と比喩的に述べ、「ロシア人を獣にしたのはテレビ」だと断じていました。政府の主張に沿ったプロパガンダにより、人々を“ウクライナを憎む獣”にしていると述べています。これを読んで、最近のSNSや陰謀論拡散に関するニュースに潜む人間性喪失の危うさと怖さを思うとともに、教育という名の下に行われる営みの二面性に思いを馳せ、だからこそ日本のこれからの教育に関わる私たちの責任の重さについて考えさせられました。
 そして文学作家というものは、「人の中に、できるだけ人の部分があるようにするために働く」と、自分自身の責任についても述べるとともに、「文化や芸術の中に人間性を失わないためのよりどころがあり、それを探さなくてはならない」と主張していました。
 個人的な思いに引き寄せて解釈した部分も多分にありますが、私たちが社会にとっていかに大事な役割を担っているか、新年早々、色々と考えさせられました。

 さて、ここから内容的に3つほどの話をさせてください。
 一つ目は相変わらず私たちの生活に様々な影響を及ぼしている「新型コロナウイルス感染症」の、人間関係への影響です。
 今回「一般社団法人 日本私立大学連盟」が行った学生アンケートの「人間関係の変化」という項目に注目してみました(注2)。3項目を選択する質問で、1位は「友人と会って話したり食事したり遊んだりできないこと」に不満というもので、41.6%の学生が選択していました。そして3位は24%の学生が選択していた「大学での友達ができないこと」というものでした。121大学58,082人の学生から回答を得たものであり、重みのある数だと思いました。自由記述では、「相手との物理的距離感を気にするようになってしまった。」「私の大学は、コロナに対して不衛生で無神経な人が多いので本当にストレス。」といったコメントがあり、最初の段階で恐怖を植え付けた新型コロナに対する感じ方の程度は人それぞれであり、少なくとも人との交流やコミュニケーションに影響を与えていることは間違いなさそうです。
 教職員の皆さんが仕事をする上で、コミュニケーション不全にだけは陥って欲しくないと思っています。感染を防ぐ対策を講じた上で、最大限交流となる場を工夫してもらいたいと思います。

 二つ目は教育とそれに関連する運営費に関わる話です。昨年の年頭挨拶で「フラッグシップ大学」の指定を目指していることを申し上げました。結果としては、残念ながら指定には至りませんでしたが、少なくとも今年からの取り組みにつながる2つの財産を残しました。一つは、今後の教員養成教育改革に対する視点を持てたことです。これまでも本学の理念としては掲げてきていましたが、「理論と実践の往還」、そして「省察」、それぞれの実質化あるいは質の向上ということを徹底的に考え、今後の方向性をある程度見通すことに繋がりました。もう一つは、「令和の日本型学校教育に対応した実践型教員養成への変革を推進する部局横断型教育研究組織整備事業」という計画が、令和5年度概算要求の教育研究組織改革分の経費獲得に繋がったことです。これは本学の教員養成機能の質を高めて、実践力と高い意欲、そして自信を持った学生を育成することを目的としたものです。
 この「教育研究組織改革分」という経費の重要な点は、それにより社会的インパクトを生み出すことで運営費交付金の基幹経費化に繋がるという点です。今は、何もしなければミッション実現加速化係数0.8%分に相当する額を国に拠出するだけとなり、6年間では1億3千5百万円ほど運営費交付金が削減されることになります。今回の事業の他に、継続分として、へき地?小規模校教育研究センターの機能強化に関する経費も得ていますので、令和5年度には人件費分を併せて7千6百万円強の経費が配分されることになっています。拠出した額を上回っています。経費のついた事業において成果を生んで、運営費交付金の基幹経費をかさ上げしていきたいと考えています。そのためには各キャンパスの教職員の皆さんの協力も不可欠です。一人一人が本学?キャンパスの将来のためを思い、本学の発展のために取り組んでもらえることを願っています。どうかよろしくお願いいたします。

 三つ目は令和5年から加速度をつけて取り組まなければならないと考えている博士課程設置の件です。教職大学院がほぼ全ての都道府県に設置され、教員養成の高度化が叫ばれている中、そして「令和の日本型学校教育」への対応を考えれば、教員養成を担う全ての大学教員が、理論及び実践の両面から教育と教師を支えていかなければなりません。教員養成大学?学部に固有の学問とも言える教科教育学を志す若い大学教員の育成にももっと積極的に取り組んでいく必要性も感じています。学部から教職大学院?博士課程というストレート進学者、現職教師、大学教員それぞれにふさわしい教育課程を準備したいと考えていますが、特に現職教師と大学教員には、アメリカなどにおけるEd.D. 型博士課程のプログラムが参考になるのではないかと捉えています。20年?30年先の日本の教員養成の真の高度化をにらんで、私たちは今から動く必要があります。
 既に文部科学省と相談を開始し、複数の大学での共同課程を模索しています。文部科学省からは早速宿題も課されていますから、それに答えながら一つ一つ階段を上り、結果を出したいと考えています。

 最後になりますが、ウクライナ?ロシアをめぐる国際情勢、それと密接に絡む先が見通せない経済状況、そして新型コロナウイルス感染症に対する対応、私たちの生活がどうなるのか予測もつきませんが、少なくとも教員養成大学?学部の将来像については最大限アンテナを張り、将来を見誤ることなく、本学の発展を視野に入れて、この令和5年のスタートを切りたいと思います。皆さんのお力添えをどうかよろしくお願いいたします。
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令和5年 年頭       
北海道教育大学長 蛇穴 治夫


注1 朝日新聞、2023(令和5)年1月1日。
注2 「新型コロナウイルス禍の影響に関する学生アンケート報告書(概要版)」、一般社団法人日本私立大学連盟、2022(令和4)年9月。

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