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  1. 国立大学法人 北海道教育大学
  2. 大学紹介
  3. 学長室から
  4. 学長メッセージ
  5. 令和5年度
  6. 学長 令和5年度入学式式辞

大学紹介学長 令和5年度入学式式辞

式辞を述べる蛇穴学長
 北海道教育大学に入学された皆さん、おめでとうございます。本学の教職員を代表して心よりお祝い申し上げます。

 本日ご臨席を賜りました来賓の皆様、そして後援会?同窓会の皆様には、心から御礼申し上げます。そして、入学されたお子さんをこれまで励まし、支えてこられた保護者の皆様には、心よりお慶びを申し上げます。

 本学は、札幌?旭川?釧路の各キャンパスに教員養成課程を置き、函館校には国際地域学科、岩見沢校には芸術?スポーツ文化学科を設置しています。2つの学科では専門的な学術研究を行い、学生にはプロジェクト型の教育を取り入れています。地域の課題解決を指向する、これら研究と教育の取り組みの成果は、学校教育や教員養成教育における生きた教材となります。つまり、教師と地域創生に寄与する人材という、性格の異なる人材を輩出しながらも、教育大学として課程と学科は有機的な関係を持ちながら地域に貢献しています。

 “Sometimes it’s only a little thing that gives us hope...a smile from a friend, or a song, or the sight of a bird soaring high above the trees...”
 突然何を言い出すのかと驚いているかもしれませんが、こういう内容でした。「時に、私たちに希望を与えてくれるのは、ほんのちょっとしたことなんだ。」。誰が言っているのかは後でお話ししますが、当人は「友だちの微笑みとか、歌とか…」と続けていました。
 「希望」、そしてそれを与えてくれる「友だち」、「歌」という言葉がありました。この言葉を頭の隅に置いて、皆さんへの期待の言葉を少し述べさせてください。

 皆さんが大学を選択するときの要素はいくつもあると思いますが、「自分が学びたいこと」については、誰でも最初に考えるのではないでしょうか。皆さんに本学で学ぼうと思わせたきっかけは何だったのでしょうか。そのことは、人によっては人生を決めることになる大事な「希望の灯」だったと思います。その「灯」を消さないように頑張って欲しいと思うし、私たちの方も皆さん一人一人の「灯」が世の中を照らせるように大きく育てていきたいと思っています。そういう意味で、入学式という節目の日に、「希望の灯」が点った瞬間を思い起こしてもらいたいと思いました。

 教員養成課程に入学された皆さんはどうですか。自分に寄り添って悩みを聞いてくれた先生の前で、涙がこぼれた瞬間。あるいは、熱心な‘熱い’先生が工夫してくれた教材で「わかった!」と閃いた瞬間。あるいはまた、部活を通じて鍛えてくれた先生の、自分に対する信頼感を感じた瞬間。…何か、「希望の灯」が点った瞬間があれば、これから困難があったとしても、それを乗り越えられると思います。
 正直、そこまではっきりとした「灯」が無いという人は、これからの体験的な授業の中で、子どもたちと触れ合いながら自分で点して欲しいと思います。
 こんな人がいることを特別支援学級の担任である小学校の先生からの投書で知りました。その先生のクラスに、支援が必要な女の子がいて、その子にいつも寄り添ってくれている通常学級の友達にAさんという子がいるそうです。そのAさんが学年通信に「特別支援学校の先生になりたい」と書いていたのだそうです。その理由に「手伝ってあげなければいけない存在だと思っていた彼女から、教わることがたくさんあった」と書いていたそうです。その先生は「Aさんは、彼女の素直さや実直さに触れ、大切な友達として尊重してくれた」のだろうと述べられていました。Aさんは、人が人と共に生きていく、その生き方に対する啓示を受け、皆に教えなくてはと思ったのかもしれません。私は、このAさんがいつまでも優しい気持ちを持ち続けて、特別支援学校の先生になって欲しいと思いながら、記事をもう一度読み返しました。最近、教師になろうとする人が減少してきているという報道がある中で、希望を与えてくれるいい話でした。皆さんも、子どもと実際に触れあう中で、「希望の灯」を大きくする新たな気づきがあるはずです。
 今更私が言うことではありませんが、教師は子どもたちの親代わりで、人としての成長を促すことが仕事です。少し乱暴な言い方をすれば「人をつくる」とも言えます。社会を根底で支える大事な仕事です。皆さんには、子どもたちの好奇心を刺激して、「わかる」ことの面白さを味わわせ、励ましたり、勇気づけてやったり、その子だけが持っているいいところを伸ばして、子どもたち一人一人の成長を後押ししてやるような、人間味のある教師になって欲しいと願っています。皆さんが教師になり、子どもと深く交わるほど、その子どもにとっては生涯忘れられない存在になります。遣り甲斐のある高度な仕事だと私は思います。

 卒業後、教職大学院に進み、さらに自信を付けてから現場に出る道もあります。その後博士課程で学んで、教育大学の教員を目指す人が生まれることにも期待を寄せています。

 国際地域学科に入学した皆さん、皆さんにも学科での学びを目指した理由があると思います。少子高齢化と人口減少の波を受けた地域に暮らし、いろんな課題を感じ取りながら、いいところがいっぱいある自分の街を元気にしたいと思った人、いませんか。国際的な場で活躍したいと思った人もいると思います。
 国際地域学科では、国際人として必要な語学力や教育マインドをベースとしたコミュニケーション能力を育てるとともに、グローバル化が地域社会にもたらす影響やその意味、地域がもつ歴史?文化?自然などの価値、人がその地域で幸福に暮らすための社会の仕組みや自然環境の在り方などを、「地域学」 という学問の枠組みの中でしっかり学び、その上で地域創生に貢献できる力をつけることを目指します。授業の1つである「地域プロジェクト」などでは実際に自分の目で現場を見て課題意識を持ってもらうことで、自らがその解決にあたるための専門的知識の必要性を自覚し、主体的に学び取りながら実践的な力を育みます。いろんな事例を学ぶことで広く専門的知識を吸収しながら、広い視野で地域課題を俯瞰できる能力を育て、人が見過ごしがちな問題点を発見?指摘したり、人と協働して課題解決にあたる能力を高めて欲しいと思います。将来、それぞれの地で活躍できるよう頑張ってください。

 芸術?スポーツ文化学科に入学した皆さんは、初めから自分が得意とするものを既に持った人たちなので、今までの話しとはちょっと異なると思います。初めに、「歌」が希望を与えてくれるという話をしました。これから話すことはそのことと関係します。
 皆さんの学科では、音楽?美術?スポーツの専門性と技能を高めることはもちろん、芸術とスポーツがもつ文化価値、人の心を動かす力に由来する社会的機能―例えば、音楽を聞いたり、歌ったり、演奏することで、また、絵画?彫刻を見たり制作する中で、あるいはチームスポーツ?個人種目の競技?練習を通じて、皆さんも芸術やスポーツが人を慰め、癒し、元気づけ、人同士をつなぐ力を持っていることを実感したことがあると思います―それを、「芸術?スポーツ文化学」として系統的に学びます。
 競泳選手の池江璃花子さんの東京オリンピック開幕1年前のセレモニーの言葉が蘇ってきます。
 「スポーツは、人に勇気や、絆をくれるものだと思います。私も闘病中、仲間のアスリートの頑張りにたくさんの力をもらいました。」
 「私の場合、もう一度プールに戻りたい。その一心でつらい治療を乗り越えることができました。」
 そういった、芸術やスポーツが持つ力を活かすことによって、地域の人々が生き甲斐を持ち、健康で心豊かに暮らすことのできる、そんな街づくりに寄与することができます。そのためにビジネス的な手法と発想力?企画力を身につけ、マネジメント力も育てて、実際に自分がその中心になって活躍するようになって欲しいと願っています。皆さん一人一人が持っている芸術とスポーツの才能から生み出されるパフォーマンスは、周りの人間の心を動かし、土台の部分で社会の形成に影響を与えることになります。自分の能力をさらに高めて社会のために役立てられるよう鍛錬してください。

? “One of the great joys in life is dinner and good conversation...”
 「人生の中で、とても嬉しいことの一つは、晩ご飯と満足のいくいい会話だね...」と言っています。これは「友だち」に関連して付け加えました。コロナ禍の中で会話も制限され、友だちとの関係性を深めることも難しかったと思います。来月には、新型コロナウイルス感染症の法律上の位置づけが季節性インフルエンザと同等の5類に分類されるようなので、お昼や夕食を、友だちと楽しく会話しながら食べられる日が、できるだけ早く皆さんに訪れることを願っています。
 昨年度の学位記授与式における卒業?修了生からの答辞の中でも、「友人のおかげで今の自分がある」といった言葉が印象に残りました。実感がこもっていました。皆さんも新しい出会いを大事に、多くの友人を作ってください。

 A friend who understands your tears is much more valuable than a lot of friends who only know your smile.
 「あなたの笑顔しか知らない多くの友だちよりも、あなたの涙の理由を理解する一人の友人の方が、もっともっと価値がある。」
 食事を楽しみながら語り合えるたくさんの友人も、もちろん大事な存在です。その中から一人でも生涯の友を見出すことができれば、さらに幸いなことだと思います。

 さて、式辞に用いた3つの英文、実はスヌーピーのつぶやきです。深い意味を持ったつぶやきをする一方で、人を食ったような一言を発することもあり、味わい深さを感じました。

 最後になりますが、本学は皆さんの課外活動や留学を積極的に支援しています。そのために保護者の皆様、同窓会?後援会、多くの企業?団体、経営協議会委員、教職員の皆様から寄付を賜り、それを「北海道教育大学基金」として修学支援事業や育英事業に使わせていただいております。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 それでは皆さんが充実した学生生活を送れることを祈念して、私からの式辞とします。
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令和5年度入学式の様子
令和5年4月4日      
北海道教育大学長 蛇穴 治夫

注 ①「スヌーピーの言葉」に関しては、以下の文献等を参考にしました。
  • チャールズ?M?シュルツ(コミック)、谷川俊太郎(訳)、ほしのゆうこ(著)、『スヌーピー こんな生き方探してみよう』、朝日新聞出版、2005. 4. 30。
  • チャールズ?M?シュルツ(著)、谷川俊太郎(訳)、枡野俊明(監修)、『心をととのえるスヌーピー 悩みが消えていく禅の言葉』、光文社、2021. 9. 30。
  • BASE81.com(https://base81.com/)、「スヌーピーの英語名言集~こころに響く一言から短文まで~(2019.11.29)」、令和5年4月4日現在で確認。
②特別支援学級の担任教師の投書は以下に掲げた新聞になります。
 須藤明美(岩手県、小学校教員)、『障害ある子と友人 将来の夢は』、朝日新聞(声)、2023. 3. 24。
③池江璃花子選手のメッセージは以下から引用しました。
 東京新聞Web版(TOKYO Web)「『希望の炎、輝いて』池江璃華子選手が五輪1年前でメッセージ」、2020. 7. 24。
 (令和5年4月4日現在で確認)

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